
個人株主とのより良いコミュニケーションを目指して
出光興産株式会社
経理財務部IR室 担当マネジャー 髙村奈津子 様、服部朝子 様
【導入サービス】
決算説明会書き起こし、IRセミナー
事業内容とIRの体制
服部様:
当社はガソリンなどの石油製品や化学素材を供給する総合エネルギー企業です。
多くのみなさまにサービスステーションをご利用いただいていますが、石油や天然ガスだけでなく、太陽光、地熱、バイオマスの再生可能エネルギーの開発も行っています。また、次世代の電気自動車(EV)向け全固体電池の主材料、固体電解質をはじめとする最先端の高機能材開発にも取り組んでいます。
当社の使命は私たちの生活に欠かせないエネルギーや素材をこれからも安定供給していくこと。温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする、カーボンニュートラルの実現に向けて「変革をカタチに」という当社の2050年ビジョンのもと、既存の石油化学事業の構造改革を進めながら、限りある資源を効率的に活用するアンモニアやeメタノールなどの社会実装を進めています。
髙村様:
このようにエネルギーシステムが大きく変わりゆく中、経理財務部IR室は当社の経営戦略や新規事業の取り組みをご理解いただくために、ステークホルダーのみなさまとのコミュニケーションを強化しています。
服部と私は、個人投資家さまからの支持を広げるための情報発信を担当しています。株主様専用サイト「いでみつコネクト」)を通じて決算内容や事業トピックの進捗をお伝えし、コンテンツ企画の立案やイベント運営を行っています。
服部様:
当社IR室7名のうち、2名が専任的に個人投資家さまに対応しています。この体制になったのは2年ほど前からですが、力の入れ具合を感じていただけるのではないかと思います。
社外から高く評価された経営陣のIR姿勢
髙村様:
経営陣も積極的に投資家さまやアナリストと対話する機会を設けています。決算説明会のほかスモールミーティングを定期的に開催し、毎年海外の投資家さまを数多く訪問しています。また、2022年から実施しているESGセミナーでは、経営陣だけでなく社外取締役も登壇しています。社外取締役を起用するという例はまだ多くないので、アナリストからも高評価をいただいています。
これらIR活動への姿勢を見ていただけたのでしょうか、日本アナリスト協会の「証券アナリストによるディスクロージャー優良企業選定」では、2023年から2年連続でエネルギー部門の1位をいただいています。特に「経営陣のIR姿勢」という項目の評価が一番高いんですよ。
服部様:
IRの責務は市場との双方向コミュニケーションです。一方的に発信するだけではなく、投資家さまからの声を経営陣に報告する役割も担っています。経営陣も市場からのフィードバックを重視しており、共に発信内容の議論検討を重ねています。
当社はBtoB中心のビジネスになるので、個人投資家さまにとって身近でない事業も多くあります。そのため、わかりやすくお伝えすること、およびタイムリーな情報発信を心がけています。
多くの企業において個人株主さまとの接点は、年1回開催する株主総会のほか、配当通知と一緒に届くIR通信の送付に限られるのではないでしょうか。当社は「いでみつコネクト」にご登録いただいている株主さまに向けて、サイト上で社長ライブ説明会や社員インタビュー記事の配信など、時宜にかなった情報をお届けすることができます。このような専用サイトを運営している企業はまだ少ないと思います。
社長ライブ説明会では、私たちが思っていた以上に多くの事前質問をいただき、配信後のアンケートでも「社長の人柄や信念に触れることができ感銘を受けた」「参加社員とのやりとりから風通しのいい社風が垣間見れた」「親しみを感じ、ますます応援したくなった」等、好意的なコメントが数多く寄せられました。
これからも「いでみつコネクト」において、新しい事業展開のみならず、その最前線で働く社員の姿など、プレスリリースや決算説明ではお伝えしきれない情報をお届けしていきたいと考えています。
また、当社が長年一社提供を続けるテレビ番組「題名のない音楽会」の収録観覧チケット、およびオフィシャルスポンサーを務める「キッザニア東京・甲子園・福岡」の入場チケットをご案内する抽選優待や、全国の製油所・事業所見学会等、当社ならではの株主さま向け企画を拡充させていきたいです。
変革期の今、応援いただける株主さまを増やしていきたい
髙村様:
相対的に当社の個人株主比率は低い水準だと認識しています。機関投資家さまの多くは順張りのため株価が下落するとさらに株式を売るようです。
一方、個人投資家さまは逆張りの傾向が強いため、「個人株主の比率を高めると株価の変動を少し抑えることができるのではないか」「中長期的なエネルギートランジションの実現に向けて、消費者でもある個人株主さまからの支持を増やしたい」「共に変革をカタチにしていきたい」という思いから「いでみつコネクト」を立ち上げ、抽選優待制度を新設し株式分割も実施しました。
2024年1月のNISA制度改革という世の中の動きも踏まえて、IR室内では個人株主比率拡大の目標を掲げています。より幅広い投資家層に当社の事業活動や中長期の戦略をご理解いただきたいと考えています。
まずは若い世代の方に当社のことを認知していただきたいと思っています。50代、60代以上の世代の多くの方々にはよく知られていますが、40代以下の世代になると認知度が低下傾向にあるということが、外部機関調査でもわかっています。
服部様:
個人株主比率拡大には、広報活動のPR施策による認知獲得に加え、IR活動で会社説明会や決算説明会等の情報をお届けすることが重要だと考えています。
多くの企業が決算説明会開催後に、その動画を自社サイトへ掲載します。当社も2021年度までは同じく動画を掲載していましたが、その労力に対し再生回数が伸びないことが悩みでした。要因として「自社のIRニュースを動画でお知らせするだけでは拡散性がない」「動画を観ることに時間を割ける方が少ない」と考えましたが、特に有効な対策は打てていませんでした。
そのような中、コロナ禍をきっかけに決算説明会も対面開催とのハイブリッド形式での実施が必要になりました。そこで当社も、「どうしたらオンラインを活用して投資家さまに情報を効果的にお届けできるのか?」と、施策を見直しました。
ログミーFinance導入で、決算説明動画の閲覧数が約7倍に
服部様: ログミーFinanceの決算説明会書き起こしサービスの導入は、営業の方からのお電話が始まりでした。決算説明会翌日に記事が納品される即時性、文章の質の高さに加え、ログミーFinanceに掲載された自社記事がNewsPicksやみんかぶ等、複数媒体に拡散されることにメリットを感じ、導入を決めました。
導入後の効果は明確でした。自社サイトに動画を掲載していた際は約250の再生回数でしたが、ログミーFinanceの書き起こし記事は約1,800以上の閲覧数となりました。再生回数と閲覧数の違いはあるものの、約7倍の伸びです。
記事を斜め読みできること、短時間で必要情報にアクセスできること、複数媒体にわたって自社決算説明会の見出しが掲載され、多くの投資家さまに目にしていただいたことがこの成果につながったと考えています。
また、書き起こしサービスに付随し、当時まだ不慣れだったZoomウェビナーの初期設定を無料サポートいただけたことも助かりました。そのZoomウェビナーで録画した動画もYouTubeに掲載され、書き起こし記事とご連携いただけるので、その点も効果的だったと思います。
ターゲットペルソナとログミーFinanceのユーザーがマッチ
髙村様:
「いでみつコネクト」を通じて、当社の個人株主さまの属性の調査も始めました。このリサーチデータをもとに、当社の事業戦略や理念に共感いただける個人投資家さまのペルソナを仮説立てして、どのようなアプローチを行えば知っていただけるのか、施策を検討しています。また、その施策を株式購入プロセスの階層ごとに分類し、目的とゴールを可視化しています。
これまでもIR担当者や経営陣の中に、個人投資家さま向け施策のアプローチ方法についての暗黙知はありました。さらにそれらをマーケティングのフレームで共通言語化したことにより、IR室内での議論が深まっています。また、「今回の施策はどこにアプローチするものか」など、経営陣や他部門との目線合わせがしやすくなりました。
ターゲティングも、これまでは年代でしか語られていませんでしたが、興味関心やタッチポイントで区切るということもあると思います。リアルではどのような場所にいる人なのか、どのようなWebメディアを利用している人なのかなど「誰に何をどのように伝えるか」を明確にした上で、戦略を練っています。
去年は40代以下の個人投資家さまを意識した内容で、ログミーFinanceのIRセミナーも実施しました。
服部様:
ログミーFinanceの個人投資家向け説明会は、書き起こし記事やYouTubeによる動画配信によって、オンラインで情報を得る若い世代にも届いている手ごたえを感じています。
ログミーFinanceのサービスに期待すること
髙村様:
新しい取り組みとしては、株主さまにデプスインタビュー(個別インタビュー)を行っています。個人投資家さまのマインドを深掘りしていくことで、わかりやすい表現などを把握して「どのように伝えるか」に活かしていく狙いです。
個人株主比率を高めるために、単に数を増やすのではなく、理念や事業展開に共感して応援したいと思ってくださる方、いわゆるファン株主を増やし、そして長期で保有していただきたいと願っています。そのためには何を伝えるといいのか、試行錯誤しています。
例えば、短尺動画をシリーズで配信するような企画も考えています。事業を網羅的に説明する構成だけではなく、テーマごとに詳細説明する動画を掲載できればいいですね。同じ業界同士の集合企画のようなものもあったらいいなと思います。競合とはいえ同じセクターで業界理解を深めるようなコンテンツが作れると、投資家さまにとって有用なのではないでしょうか。
IRは会社の予算を大きくとれない企業も多いためか、なかなかIR向けのサービスが発展しません。片や、広報部門は比較的予算があります。ログミーFinanceでも、よりPRと連動できるようなメニューがたくさんあるとおもしろいのではないでしょうか。
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