ログミー株式会社

直接アプローチできない投資家へ、リーチ拡大を図る–説明会の全文ログ化を重ねる、DICが見据えるもの

DIC株式会社
コーポレートコミュニケーション部長様

業種:化学
事業内容:印刷インキ、有機顔料、合成樹脂等の製造・販売
ご利用目的:決算説明会のログ化による、個人投資家や複数媒体へのリーチ拡大

「化学で彩りと快適を提案する」。印刷インキの製造と販売で創業し、その基礎素材である有機顔料・合成樹脂をベースとして、自動車・家電・食品・住宅などのさまざまな分野に事業を拡大するDIC株式会社。

個人投資家や海外投資家への情報開示を積極的に模索する同社に、ログミーファイナンスを導入したきっかけや反響などについてうかがいました。

DIC株式会社の事業内容

――まず、御社の事業内容を簡単にお聞かせください。 

中川真章氏(以下、中川):簡単に説明するのはなかなか難しいのですが、DIC株式会社は、旧社名を大日本インキ化学工業株式会社と申します。今年が創業111年目で、明治時代に印刷インキのメーカーとして創業しています。その後、印刷インキの原材料である有機顔料や合成樹脂を自社で内製するところから、多角化を始めたという経緯があります。

現在では、その2つの原材料を核に、さまざまな製品への多角化を進めています。最新の製品として、例えば化粧品用の顔料があったり、液晶の材料があったり、成形加工品があったり。いろいろなものを手掛けている会社です。

その中で、今年(2019年)の1月に組織を大きく変えました。今までは「プリンティングインキ」という1つの製品で事業セグメントを作っていたのを、「パッケージング&グラフィック」という用途別の展開に変えたことが、今回の組織変更の1つのトピックになっています。

インキだけではなく、今まで「ファインケミカル」という名前で呼んでいたところを、「カラー&ディスプレイ」と呼び、「ポリマ」や「コンパウンド」、「アプリケーションマテリアルズ」と呼んでいたものを、「ファンクショナルプロダクツ」という機能性の製品群という分け方に変えました。より市場のニーズやユーザーの業界なりに要求されるものをベースに、事業を再編成しました。

その目的は、できるだけいち早く大きなカテゴリで、社会の変革や環境の変化についていくことです。早いスピードでの投資の判断や、事業の変革。それを中期経営計画で「事業ポートフォリオの転換」と言っておりますが、そのスピードアップをしていこうというのが、今回の組織再編成の意図です。

基本的には、化学の中間素材面から、お客さまになんらかの価値をものづくりで提供する。とくに今回は、「社会的価値を提供しましょう」がコンセプトになっている会社です。

IR活動において注力していること

――そのような事業をやられている中のIR活動について、今注力している部分はどういうところでしょうか? 

中川:そうですね、注力分野はいくつかあります。我々は、IRの歴史が決して長いほうではなく、今まではどちらかといえば機関投資家さまとの対話が重視されていました。

その中でログミーさんにお願いした理由の1つは、「個人投資家さま向けの情報開示をどうやって充実させるか」。それから、地域的な側面で「東京以外の方に、どうやって情報をいち早くお届けするか」。東京ですと決算説明会がありますが、なかなか地方まで出かけていくことは難しく、それほど回数も重ねられません。

それから、国や言語ですよね。「DICに直接アプローチできないような海外の方にとっても、ネットを使えばなんとかなるのではないか」とか。あるいは、個人投資家向けでは、説明会の回数を増やすなど。

そういうことで、個人や地域・言語・国の広がりを捉えていくことが、今の我々の新しい考え方です。

――今のお話だと、もともとは機関投資家へのIRに注力されていたと。逆に、そこから個人・グローバルなど、広くやっていこうと思ったきっかけはあったのでしょうか? 

中川:機関投資家として海外の比率が年々増してきたので、海外の投資家に対する重要度は高まってきています。基本的に我々の会社は、海外事業が多く、サンケミカルという代表的な海外のインキメーカーがグループとしてありますので、知名度がやや海外寄りのところがあったかと思います。

逆に言えば、10年前に社名変更をしてから、日本国内での知名度が今一つ盛り上がってこないところがありました。今はテレビCM等もやっていますが、「どうやって、国内あるいはアジアのみなさまに、DICという会社を知っていただくか」ということが課題でした。

フェアディスクロージャーの精神に則って情報を開示

――私たちの考えとして、今はIR界全体が過渡期なのかなと思っております。フェアディスクロージャー・ルールが導入されたり、東証一部企業の条件変更が決まったりするかもしれない中で、今後IR自体はどう変化されていくと思われますか? 

中川:そうですね。フェアディスクロージャー・ルールが変わったからといって、我々自体で何か姿勢が大きく変わったかというと、そういうことではないですよね。情報開示のやり方が変わるようなことではないのですが、今の流れとしてはよりタイムリーに、できるだけ広い投資家のみなさまに、きちんと情報を開示する必要は出てきていると思っています。

――それでは、以前からフェアディスクロージャーに関しては、御社の場合はきちんとやってきたということでしょうか。ほかの企業さまにお話を聞くと、「実は機関投資家にしか話せない話もあるんだ」とか「アナリスト説明会をやると、そこでしか話せないお土産話もあるから、説明会をオープンにできないんだ」みたいな風潮が、やっぱりあるんですよね。

中川:我々はできるだけそういうことがないように、とくに最近は努めています。それはそれで、投資家のみなさまから、「せっかくミーティングするのに」みたいな意見はあるかもしれません。しかし、できるだけフェアディスクロージャーの精神に則って、開示できるものはきちんとみなさまがアクセスできるようにしようという考えです。

――機関投資家の方からフェアディスクロージャーに関する気の遣い方などは、以前に比べると見られるようになりましたか?

中川:フェアディスクロージャーについては、機関投資家からご意見をいただくよりは、どちらかといえばそれ以外の方です。例えば「ガバナンスの観点で」とか、あるいは「スチュワードシップのミーティングで」とかで、考えを聞かれることはあります。

「フェアディスクロージャー・ルールが出たから」ということでいうと、「より均質に、よりタイムリーに」というところを心がける。そういう意味でもオープンに情報を出すことで、あまねく地球のどこでも見られるようなサイトへ改善していこうと考えています。

――ログミーファイナンスをご導入いただいてから、投資家の方とのコミュニケーションの仕方でよくなった部分や変わった部分はございますか? 

中川:やはりネットに開示していることで、機関投資家の方からも、そちらをご覧になっているというご意見を聞いております。「開示情報として事前に見る際、提供されている情報のボリュームが非常に増えた」。社長の話している内容などを、わりとそのままストレートに出していますので、「非常に参考になる」というご意見をいただいております。

決算説明会で重要視しているのは「投資家から経営陣への意見」

――話を決算説明会にフォーカスさせていただきます。御社の中で、決算説明会の位置づけや目的をどのように考えられていますか? 

中川:そうですね。決算説明会ですから、当然「我々の決算の内容を、きちんと正確にお伝えする」ということになろうかと思います。そういう意味でも、そこで説明した内容については、そこから何かを取り除いていくより、できるだけ臨場感も含めてそのまま出せるようにしたいと思っています。

――ほかの企業さまでは、「IR活動をやっていく中で、どこにKPIを設定しようか?」ということが課題になっていて。決算説明会の来場者数や年間の1on1ミーティングの数などを設定されている企業さまが非常に多いのですが、御社でもそういった部分は設定されていますか? 

中川:我々の場合は、件数や人数そのものをKPIとしては捉えていないのです。今とくに重要視しているものは、「投資家から経営陣への意見のフィードバック」などです。

もちろん件数も重要なのですが、それを「何件こなす」ことが重要ではなく、「内容」を重視しているということです。とくに経営陣側が、ミーティングから上がってくる投資家の意見を経営の参考にするようになっていることが、最近の大きな動きかと思います。

――そのフィードバックの精度を上げることなどを、非常に重視されているということでしょうか? 

中川:精度といいますか、きちんと整理された情報として、経営陣に提供するということですよね。細かく言っていけばいくらでも情報は出るのですが、ごちゃごちゃと言ってもだめですから。こちら側できちんと解釈・整理して、「全体としてこういう方向感がある」「こういうところが重視されている」とか、そういうことを伝えていくということです。

ログミーファイナンス導入までの経緯

――次に、ログミーファイナンスのサービスをご導入いただくまでの経緯についてうかがいます。どういうところで弊社のサービスを知っていただいて、今までご導入いただいているのか、お話しいただいてもよろしいですか? 

中川:我々の場合はIR活動として、決算説明会とミーティング、それからいくつか個人投資家向け説明会のように、ポイントポイントでやっていて、いろいろな方に広く情報提供するツールがなかったところ。先ほど申し上げたように、海外投資家や個人投資家に向けた情報提供をできるだけ充実させたいところがあります。「なんとかリーチする方法はないのか?」と今までと違うやり方を求めていったところで、「やはり、ネットを使うのが早いのではないか?」というところが大きいですかね。

――なるほど。インターネットを介して広めていくサービスは、いろいろとあると思います。その中で、何か弊社を選んでいただいた決め手はありますか? 

中川:映像(スライド)がきちんと出るところと、テキストを起こしていただけるというところです。我々は今まで、音声配信まではやっていました。ただ、やはり音声では、とくに日本人しかわからない。外国の方は日本語で音声配信をやられても内容がわかりませんし、動画といえば動画なので、アクセスできる人も限られてくるということです。

それからもう1つは、社員自体は決算説明会に出ていませんから、そういう人に対して、文字で社長や副社長の言ったことを知ることができる。「経営陣の考えを伝える場としても役立つのでは?」というところがあって、文字で伝えられるメディアとしてログミーさんを選びました。

――ありがとうございます。実際に、社員の方からの反響はありましたか? 

中川:けっこう見ていますね。「Webサイトのアクセスがどうなっているかな?」と気にするわけですが、かなりの頻度で社員が見ているという話を聞きます。

――なるほど。海外からも含めてでしょうか? 

中川:そうですね。でも、国内が多いです。

また、外向けにはやはりリーチを増やしたいので、提携されているメディアが多いことは1つの重要なファクターでした。あとは、わかりやすさです。

社内向けにはIRというものの存在感といいますか、プレゼンスを高めようということを1つの目標にしています。そういう意味では、「IRとして、こういう活動をしています」と広く知らしめるためのツールになり、かつ社長や副社長の生の言葉も理解してもらえるということ。このツートラックの目標がありました。

――それ以外に、反響があったことやよかった部分はありますか?

中川:先ほども申し上げましたが、やはり今までは音声・資料、それから個別のミーティングというかたちでした。しかし、決算発表会そのものの場の雰囲気や、立っている本人の顔写真・台詞の内容が伝わるという意味で、非常にある意味生々しいというか、そのままを伝えられるようになったということが、大きいのかなという気がします。

若手投資家にリーチするための手段

――次に、今は個人投資家の方の高齢化がかなり進んでいると思っております。おそらく、御社の個人投資家の年齢比率も高いのかなと思います。そこに対する若手投資家にリーチするための手段や、今は私どももご一緒させていただいていますが、「今後はこういうことをやっていきたい」「今はこういうところが課題だ」というところはありますか? 

中川:おっしゃるように、確かに投資家の方の高齢化があります。とくに我々の場合は、旧社名でご存じの方がだいたい60代以上なのです。長いこと投資をしていらっしゃる方が集中しています。

そうなってくると、「大日本インキは知っていても、DICは知らない」「そんな会社だったんだ」みたいな話になっています。その一方で、若い方にはそもそも「大日本インキ」のイメージがないので、我々の会社そのものを伝えるのが非常に難しいんですね。

そこのところで、ログミーさんがやっておられるような活動で、若手投資家に対してのプレゼンスを上げたいとかアプローチをしていきたいということで、御社のご提案でもやらせていただいている説明会みたいなものもあります。

そういう意味で、先ほども申し上げましたが、いろいろなところで媒体の種類を増やす。ログミーさんの持っていらっしゃるいくつかの媒体や、そういう接触機会をできるだけ増やしたいということです。

あとは、外国語ですね。これからどうしようかというのは、まずは英語での情報提供をどうするか。そういうところは考えていかなければいけないので。あとは、若手投資家向けのイベント的な企画に、どうやって我々が乗っかっていくかもありますね。

先日1回やらせていただきましたが、今まで我々が会ったことのないような方々にお会いできたり、聞いたことのないようなご意見も非常に出てきたりしていますから、そういう場をもっとご提案いただければ考えたいなと思っています。

ソーシャルメディアでもIR情報を発信

――ほかにも弊社サービス以外で、そういう施策をやられていますか? 

中川:なんでしょうね……。うちのWebサイトを見ていただくことや、続けている音声配信など。まだ始めたと言えるかどうかというくらいですが、Twitterですね。少しずつ若手投資家の方々に対するリーチについて、今後はSNSやネットで情報を拾っていく世界になった時に対する施策はありますね。

あと、うちにもAIがやるファンドなどが入ってきていますので、結局そういうところに向けていくと、ネットの中でも「DIC」の名前を広めていかないと太刀打ちできなくなりますから。そのための施策として、いろいろなものをやりたいなともがき苦しんでいます。

ソーシャルメディアについては、今まで我々はほとんどやった経験がなくて。今まさしく、トライしながら手探りで始めたばかりです。

先ほどのAIのように、Webで見たりデータを拾ったりしてくる機械に対して、どうやって情報を提供すれば評価が上がるのか。あるいは情報が伝わるのかというところも、これからいろいろ試してみないと結果がわからないところなので、まだこれからですよね。今年以降やっていきたいです。

――Twitterやソーシャルメディアは、コーポレートのアカウントでしょうか? それとも、IRとしてのアカウントを持っていらっしゃるんでしょうか? 

中川:今のアカウントとしては、コーポレート全体ですね。IR情報はIR担当が発信、PR情報は広報担当が発信しています。

――そこをフォローしている方は投資家の方も多いと思うので、PR情報とIR情報を同時に受け取ることは、非常に価値が高くなりますよね。

中川:我々は手探りの状態ですから、今からたくさんアカウントを持ってそれぞれが活動していくよりは、最初は一本化しておいたほうがわかりやすいのかなということですよね。

――管理上も分散していると、結局どこかが廃れていってしまう?

中川:「本命のアカウントしか発言していません」というより、ちゃんとずっと一貫して、ある程度の情報量はあったほうがいいだろうなと考えています。

今後のログミーファイナンスに期待すること

――それでは最後に、今後ログミーファイナンスに対して「こういうことを期待したい」とか「現状としてこういうところが足りないから、強化してほしい」ということはございますか? 

中川:やはり我々としては、まだこういうところの知識が非常に不十分でございますので、いろいろな新しい手段や効果がありそうな方法をご提案いただきたいなと思います。

とくにデジタル面では、我々は会社全体でも「デジタルでいろいろと対応していかなければいけない」という方向感が出ていますので、そういうところをできるだけ活用したいというか、しなければいけないところにあると思っています。ぜひ、よろしくお願いします。

――こちらこそ、よろしくお願いします。ありがとうございました!

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